事業を通じた社会課題の解決
手術器具のトレーサビリティ管理と保全作業支援
医療の現場では、近年、院内感染のリスクを回避し、患者の安全を確保するために、従来の手術器具の管理・保全方法を見直す動きが広がっており、医療機関における器具の管理を徹底させようとする規制当局の動きも世界的に強まっています。
当社は、これらの動きに呼応して、2012 年、手術器具に2次元バーコードを打刻し、トレーサビリティ管理を可能にする専用のマーキング装置を発売し、日本をはじめ、世界各国の医療機関、手術器具メーカーを中心に提案を進めてまいりました。
また、手術後の手術器具・機器の分解、洗浄、セット組、滅菌などの専門的作業を効率化するために、当社が生産現場に導入している生産支援システム「デジタル屋台※」を応用し、最適なソリューションを構築するための共同研究を、国立大学法人浜松医科大学医学部附属病院と推進してまいりました。
手術器具のトレーサビリティ管理は、器具の在庫・所在管理、状況把握を可能にすることで、院内感染リスクの回避、患者の安全確保に貢献し、デジタルマニュアルを活用した保全作業支援システムは、経験者の作業の暗黙知を形式知化し、IT化することで、作業の属人性を廃し、人手不足の解消にも寄与します。
現在、一連のシステムは、浜松市内の民間病院で稼働を開始していますが、今後も病院との連携・協働を進めながら、システムの有用性を高め、世界中の病院への展開を視野に事業構築を図ってまいります。
※デジタル屋台:当社の製品は、当社が独自開発した「デジタル屋台」で組み立てられています。作業者は、パソコンのディスプレイに表示された3Dグラフィックマニュアルを確認しながら、工程ごとに必要な部品を小物部品ストッカーから取り出し、グラフィックマニュアルが指示する電気ドライバーを使って製品を組み立てていきます。間違った部品やドライバーを使用することがないよう工夫されているだけでなく、各工程で品質検査を実施することで、工程内で品質を作り込んでいます。デジタル技術を活用することで人間の記憶力や注意力をサポートし、高い品質と生産性を同時に達成していることが特長です。各屋台での作業ログデータはサーバ上に保存され、現場管理者が作業進捗を把握したり、データ解析を通じて改善活動につなげたりすることができるようになっており、個別の屋台の管理だけでなく、工場全体の生産を最適にコントロールできる点も大きな特長です。