ものづくりの街・浜松を元気に 起業支援拠点「FUSE」
2021年06月15日 デジタルプリンティング, 3Dものづくり
ローランド ディー.ジー.本社と同じ浜松市にある大規模な起業支援拠点「FUSE(フューズ)」様を紹介します。起業家や地元企業が協働するコワーキングスペースと工房を持ち、工房では当社UVプリンターなどの製品が活用されています。
地元の信用金庫が運営するユニークな起業支援拠点
FUSEは2020年夏、浜松駅から徒歩5分の商業施設・ザザシティ浜松中央館の地下1階にオープン。浜松いわた信用金庫が運営を担います。ラウンジやコワーキングスペース、工房、イベントスペースなどを備え、起業家など「コトを起こす」すべての人を支援します。
ラウンジ
コワーキングスペース
プロ仕様のデジタル機器を備えた工房は、アイデアをカタチにすることを促すため会員に無償で開放。樹脂などに直接印刷できる当社のUVプリンター「VersaUV LEF2-200」、コンパクトなカッティングマシン「CAMM-1 GS-24」、試作に適した3次元切削加工機「MODELA PRO II MDX-540S-AP」(日本国内向けモデル)を導入しています。他にもレーザーカッター、3Dプリンター、大型の木工用CNCルーターなどを利用できます。
工房にUVプリンター「LEF2-200」(手前)、カッティングマシン「GS-24」(奥)を導入
3次元切削加工機「MDX-540S-AP」を備えた木工用エリア
FUSEの様子を動画でご覧いただけます。
FUSEの運営スタッフの皆さんにお話を伺いました。
浜松いわた信用金庫 ソリューション支援部 新産業創造室 室長 渡瀬充雄さん
同副調査役 渡邉迅人さん
工房責任者・デザインアドバイザー 谷川憲司さん
工房スタッフ 金原聖子さん
(左から)FUSEスタッフの渡邉さん、金原さん、谷川さん、渡瀬さん
Roland DG:FUSEはどのような場所か教えてください。
渡瀬さん:スタートアップや第二の創業を目指す企業などが集まり、刺激を受けながら自分の新しいチャレンジを実現する場所です。
渡邉さん:今まで出会わなかった人と出会い、プロジェクトを起こすためのスペースを用意しています。コワーキングスペース、工房、イベントスペースが3本柱です。
2021年6月末までは会費無料の期間としていて、会員は200名を超えました。約2割は地元の中小企業の経営者です。代々継承してきた事業を活かし、自分の代で新しいことにも挑戦しようとしています。そして約7割がフリーランス、個人事業主、スタートアップ。業種はさまざまです。残り1割は大学関係者や学生ですね。
FUSEを立ち上げたきっかけは?
渡瀬さん:浜松はものづくりの街ですが、近年は廃業社数が開業社数を上回ることもあり、少し元気がありません。主要産業である輸送機器も大きな転換期を迎えています。
地域の信用金庫として長年創業支援を続ける中で、シリコンバレーに職員を派遣したことがFUSE立ち上げのきっかけになりました。FUSEを浜松版のスタートアップ拠点にしたい、そしてこの地域に古くからある「やらまいか精神」(「やってみよう」の方言で、新しいことにチャレンジする精神)をもう一度呼び起こし、地域の経済を継続的に活性化したいという想いがあります。
信用金庫が運営するというのがユニークですね。
渡邉さん:私をはじめシリコンバレーで学んだ職員や、創業支援に携わり地域の企業や人をつないできた職員がスタッフとして常駐しています。会員の相談に乗ったり、起業を目指す方をベンチャーキャピタルなどの専門家につなぐこともあります。
アイデアを実現するための工房
工房は会員の皆さんにどのように利用されていますか?
谷川さん:機器ごとに講習を受けた会員のみ利用できるルールにしています。基本的には本人に機器を操作してもらいますが、習熟度に応じてスタッフがサポートします。普段お使いのIllustratorなどのグラフィックソフトが使えるUVプリンターやカッティングマシン、レーザーカッターなどは親しみやすいようで、よく利用されています。
金原さん:自分の店舗やキッチンカーの開店準備用のグッズを作る会員が多いですね。梱包箱にロゴを入れるスタンプ、お客さんの番号札、商品にサービスで添えるグッズなどを自作しています。
当社製品をお使いになっていかがですか。
金原さん:UVプリンターでは主にアクリルのキーホルダーなどの小さなアイテムを作ります。仕上がりもきれいで満足いただいています。工房の機器の表示板や案内板もUVプリンターやカッティングマシンで内製しました。
谷川さん:UVプリンターは直に印刷できるので、初めての方は一様に「すごい」「作ってみたい」と目をキラキラさせますね。画質もすばらしく、最終製品も作れると思います。
遠州地域(現在の静岡県西部)の天狗伝説をモチーフにした会員のオリジナルキャラ「てんぐちゃん」(右)やスタッフのイラストをグッズに
UVプリンターで機器の危険度の表示板(左)、カッティングマシンで備品のステッカー(右)を内製
FUSEに工房を設けた狙いを教えてください。
渡邉さん:企画段階から、浜松地域に作るなら単なるコワーキングスペースにするのではなく、ものづくりは外せないと思っていました。起業家にはリアルなものづくりが必要だという想いで工房を設けました。
谷川さん:FUSEではシリコンバレーで定着している「デザイン思考」という考え方を導入しています。ポイントは2つあり、ひとつはユーザー視点を持つこと。自分の思い込みでなく、実際のユーザーの視点で考える。そして考えるだけでなく、すばやく実験してプロトタイプを作り、評価を経て市場に出す。その流れの中に工房があります。
これから工房でチャレンジしたいことは?
谷川さん:工房はクリエイターなどを中心に活用いただいていますが、利用者をもっと広げていきたいですね。切削加工機を含めた木工系のものづくりも強化したいと考えています。
そして、FUSEの趣旨である新しいビジネスを起こすという部分ですね。趣味の延長で工房を利用する方もいますが、「面白そうだから作ってみよう」「じゃあ、これ売れるかな」と趣味とビジネスが意外につながることもあります。あまり垣根を作らず、自分で作れる人を増やしていきたいと思います。
会員とともに新しいコトを起こしたい
オープンから約1年、反響はいかがですか?
渡邉さん:コロナ禍で東京から静岡中部にUターンし、創作拠点を求めてFUSEに来てくれる方もいます。女性の起業家が会員になってすぐに工房で試作を始めるという動きが出てきたのも嬉しいですね。
最後に、FUSEが目指していることを教えてください。
渡瀬さん:浜松市は昨年夏、内閣府から起業支援の拠点都市に認定されました。今後は他の地域からもスタートアップが集まり、地元の中小企業などとコラボして新しい展開を目指す拠点にしていきたいと思います。
私たちスタッフも会員の皆さんと一緒にチャレンジャーとして新しいコトを起こすという意識で取り組んでいきたいと思います。
ありがとうございました。
製品を通じて、同じ浜松で夢に向かって頑張る皆さんを応援できればうれしく思います。