Roland Imagination Workshopの参加者

中国でのSTEAM教育の最前線をご紹介

2018年05月08日 イベント・展示会, デジタルプリンティング, 3Dものづくり

中国では今、STEAM教育と呼ばれる新しい教育手法が注目を集めており、当社の中国の子会社Roland DG China(以下、DGC)では、このSTEAM教育の普及に向けた活動を積極的に展開しています。今回はその取り組みについて、マーケティングマネージャーであるCheng Qiに話を聞きました。

まず、STEAM教育とはどのようなものか教えてください。
Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の5学科を重視するアメリカ発祥のSTEAM教育は、世界中の教育現場で注目を集めています。中国でも近年、このSTEAM教育への取り組みが開始されています。

なぜ、中国ではSTEAM教育が注目されているのでしょうか?
従来の中国の学校教育では、大学入試に合格するための知識を教えることが優先され、ものづくりや芸術に関する科目はあまり重視されていませんでした。中国では、少子高齢化による労働人口の減少を背景に、今後、国としての競争力を高め成長していくためには、科学技術の知識と独創的な発想により、イノベーションを起こすことができる人材を育てていかなければいけないという機運が高まっています。そこで中国政府は、子供の頃から科学技術の知識や創造性を身に付け、自分でものを考えて作ることができる人材を育てるために、小学校から高校までの学校教育にSTEAM教育を導入しようとしています。しかし、専門の教師が少ないため、どのように生徒に教えていけばよいか多くの教員が悩んでいるのが現状です。

教育市場に向けて、DGCではどのような活動をしていますか?
教育現場とつながりの深い国内のファブラボ*と協力しながら、インクジェットプリンターやカッティングマシン、3次元切削加工機などの製品を使った教育カリキュラムを提案しています。また、STEAM教育の普及活動の中心的存在である上海の同済大学と協力して、独自のカリキュラムの開発に取り組んでいます。昨年10月には、同済大学主催の「第1回国際STEAM教育フォーラム」が開催され、当社も参加しました。

* デジタルからアナログまでの様々な工作機器を取り揃えた市民工房。

国際STEAM教育フォーラムにて、同済大学のDing Junfeng 准教授(右から3人目)とDGCのマーケティングマネージャー、Cheng Qi(右から2人目)

国際STEAM教育フォーラムにて、同済大学のDing Junfeng 准教授(右から3人目)とDGCのマーケティングマネージャー、Cheng Qi(右から2人目)

国際STEAM教育フォーラムはどのようなイベントだったのですか?
STEAM教育の普及を目的に、教育関係者を集めて3日間にわたり開催されたフォーラムです。前半は同済大学をはじめとした国内外のSTEAM教育の先進事例に関する講演やディスカッション、実際の教育現場の見学会が行われました。後半はその中で学んだ内容を実践するワークショップが開催されました。

多くの教育関係者が来場した国際STEAM教育フォーラムの様子

多くの教育関係者が来場した国際STEAM教育フォーラムの様子

同済大学はSTEAM教育をどのように広げようとしているのでしょうか。
同済大学は、小学校から高校の教育に特化したファブラボ「FABLAB O」を立ち上げ、このFABLAB Oを通じてSTEAM教育の普及活動を行っています。FABLAB Oの最大の特長は、当社製品を含むデジタルツールやカリキュラム、講師をパッケージとして提案していることです。FABLAB Oの講師は、機械の使い方だけでなく、生徒への指導方法も学校側に提供します。

DGCが国際STEAM教育フォーラムで行ったことを教えてください。
期間中は、ブースの出展と2日間のワークショップを行いました。ワークショップの初日は、同済大学と共同で開発したSTEAM教育のカリキュラムの中から、小学校、中学校、高校などを想定したプログラムを実施しました。

DGCのブースの様子

DGCのブースの様子

2日目は、「Roland Imagination Workshop」と題し、FABLAB Oなどから著名な講師をお招きして、当社製品とスマートフォンアプリなどを使ってオリジナルグッズ製作を行うワークショップを開催しました。このワークショップは、STEAM教育のひとつの具体例を提案するとともに、ローランド ディー.ジー.のビジョンである「イメージをカタチに」を参加者に体感いただくことを目指しました。小学校の教員などを中心に、STEAM教育の導入を検討している多くの方に参加いただきました。

ワークショップで工夫したことは何ですか?
機械やものづくりなどの知識がない方でも、実際に手を動かしながらさまざまな知識に触れられるよう工夫しました。例えばオリジナルバッグを作るワークショップでは、画像を加工できるスマートフォンアプリを使ってデザインを行い、それをバッグのどの場所にどのような大きさで配置するかを設計し、当社のインクジェットプリンターでプリントします。さらに、プリントの上から手描きで文字やイラストなどを加え、最後はAR(拡張現実)技術を使ってプリントしたデザインを画面上で動かして遊ぶなど、なるべく幅広い知識や技術を体験できるようにしました。

参加者にアプリケーションの操作方法を教えるFabLab OのGao Xiaojing氏(写真右から1人目)

参加者にアプリケーションの操作方法を教えるFabLab OのGao Xiaojing氏(写真右から1人目)

3次元切削加工機を使ったプログラムでは、上海のファブラボ「新車間」のマネージャーFeng Jia氏(写真左から3人目)が講師を務めました

3次元切削加工機を使ったプログラムでは、上海のファブラボ「新車間」のマネージャーFeng Jia氏(写真左から3人目)が講師を務めました

スマートフォンアプリやソフトウェアを使い、手持ちの写真にデザインを施す参加者

スマートフォンアプリやソフトウェアを使い、手持ちの写真にデザインを施す参加者

ワークショップの反響はいかがでしたか?
参加者の反応はとても良かったです。専門知識がなくても、デジタルツールを使って簡単にデザインを作り、その場でトレーナーやTシャツ、バッグなどを製作するという、まるで本物のデザイナーになったような体験ができる創造的かつ実践的な内容であったことが評価されたのではないかと思います。

参加者が製作したオリジナルバッグ

参加者が製作したオリジナルバッグ

ワークショップの参加者

ワークショップの参加者

今後、中国の教育現場に向けてどのようなことを提案していきたいですか?
中国の他の都市でも同様のワークショップを順次開催していきたいと思います。また、教育機関を対象に、当社製品を活用した創造的な作品を募り、表彰するアワードの開催も計画しています。当社は幅広い製品ラインナップの中から、電子工作やプログラミングには3次元切削加工機などの3Dものづくりに関する製品、芸術の分野にはインクジェットプリンターなどのデジタルプリンティングに関する製品をそれぞれ提案できるのが大きな強みです。これからも当社の製品や活動が、STEAM教育を導入する際のヒントになればと思っています。