機能とデザインに優れたスポーツウェアをインクジェットで製作
2021年12月14日 デジタルプリンティング
サポーターなどの医療用品メーカー、ダイヤ工業株式会社様(岡山市)では、当社インクジェットプリンターをオーダーメイドや社内試作に活用いただいています。製品企画・開発担当の猪木(いぎ)友大さん(写真)にリモートでお話を伺いました。
健康を支える製品を自社で開発
Roland DG:はじめに、御社の事業について教えてください。
サポーターやコルセット、サポート機能の入ったスポーツウェアやアンダーウェア(スパッツ)などを開発・製造・販売しています。製品は主に全国約25,000件の接骨院や鍼灸院を通じて患者さまへ提供するほか、作業現場などの業務用や個人向けの“通心販売”も行っています。また新規事業としてペットケア用品も展開しています。
犬の負担が少ない散歩用ハーネスと専用カバー
オーダーメイドも行っているそうですね。
サポーター、コルセットなどの製品はS・M・Lのようにサイズ展開をして販売しています。一部、ご用意しているサイズに合わない方向けの製品や特殊な競技の動きをサポートしたいユーザーにはオーダーメイドで対応しています。
たとえ同じ競技でも、過去の怪我や身体の状態によってサポートが必要な部分は異なります。お客さまの立場に立ち、装着しやすく、長時間着けても快適な製品を作ることを心がけています。
競技別では、近年はボートレース選手のお仕事が多いですね。他にも陸上競技、相撲、シュートボクシング(立ち技格闘技)など幅広い競技の選手からオーダーがあります。
ボートレース用のオリジナルウェア
製品はどのように作っていますか?
既存製品は国内の協力工場で製造することが多いですが、小ロット生産や試作開発は岡山市の本社(下写真)で行います。本社はオフィス、製造・試作用のアトリエ、お客さま向けのショールーム兼直営ショップやスポーツジムを備えた健康複合施設です。
開発は、一人の開発者が設計からデザイン、試作の縫製までを行います。アイディアをすぐカタチにできるように、アトリエには生地や小型の自動裁断機、約20台のミシン、ローランド ディー.ジー.のインクジェットプリンターなどの設備を揃えています。
小ロット生産や試作に対応ができるアトリエ
アトリエでの製造工程を一般公開している
ショールームでは試着だけでなく、その場で身体を計測し、サイズやデザインをシミュレーションしながらオーダーメイドもできます。コロナ禍でお客さまのご来店が難しい時期もありましたが、個人向けのオーダーメイドはこれから伸ばしていきたいと考えています。
オーダーメイドに欠かせないインクジェットプリンター
テキスタイルプリンター「Texart XT-640」
小型のインクジェットプリンター「VersaSTUDIO BN-20」
インクジェットプリンターを導入された経緯を教えてください。
以前は製品のブランドネームや型番をタグで縫い付けていましたが、肌当たりが気になっていました。生地に直接ロゴを転写したいと、2016年に小型のインクジェットプリンターBN-20を導入しました。
また、オーダーメイドでは生地のプリントを協力工場に注文していましたが、リードタイムの短縮が課題でした。そこで昨年、テキスタイルプリンターXT-640を導入し、内製化することにしました。生地の全面にデザインやパターンを昇華転写プリント※しています。
※転写紙に反転印刷したデザインをポリエステル生地などに加熱転写して印刷すること
最近の取り組みについて教えてください。
直近ではボートレース選手のアンダーウェアや、オフロードバイクを使う競技「トライアル」の選手のウェアをインクジェットで製作しました。
また、自社で開発したオリジナルの布マスクもお客さまから好評です。会話中や運動中も呼吸しやすく蒸れにくいエチケット用のマスクです。昨年全国的にマスクが不足したとき、私たち独自の技術や発想でマスクを作れないかと開発しました。
インクジェットでデザインのバリエーションも広がりました。一般公募したデザインを製品化(下写真)、また地元のスポーツチームを応援するコラボレーションのマスクも作りました。
テキスタイルプリンターを導入していかがですか?
マスクのプリントで初めて使用しましたが、想像以上に発色が良く、特にピンクなどのはっきりした色がきれいに出ると感じました。ウェアでよく使うベタ塗り、グラデーションの再現にも満足しています。
試作品は完成品と同じ生地・品質で作りますが、プリンターを導入する前はリードタイムがかかるため、プリント部分はあまり再現ができていませんでした。導入してからは、試作段階でプリントすると開発者自身もイメージが湧きやすく、第三者に説得力をもって伝えられ、企画提案も通りやすくなりました。
また、生地の染色工程がいらないため、午前中にデザイン、お昼にプリント、午後に試作品を作るというスピーディーな流れができました。
ボートレースのお仕事では、競技の規則上、レース前の選手は外部との連絡を遮断します。急ぎの場合、連絡ができずサンプルが間に合わないもどかしさもありましたが、プリンターを導入してからは選手から「早くて助かった」と喜ばれます。
オーダーメイドをもっと手軽に
最後に、今後の事業展開についてお聞かせください。
既存製品であらゆる方に対応するよりも、オーダーメイド発想でお客さまに合わせた製品を開発していきたいです。利用シーンによってデザインの要望が増えても、インクジェットで対応できると期待しています。
例えばコロナ禍では、個人でできるランニングやマラソンが人気です。当社独自の機能的なウェアにデザインをプラスして、「ランニング中の膝の負担をサポートしたい」「オリジナルウェアで気分を高めたい」といったニーズに応えたいと考えています。
今後はお客さまがもっと気軽に自分だけの製品をオーダーできるよう、既存製品のような納期でお届けすることや、オンラインでデザインをカスタマイズできるサービスなども充実させたいと考えています。
これからも快適に楽しく身体を動かせるような製品に活用いただければうれしく思います。ありがとうございました。