疫病退散で人気の「アマビエ」をUVプリンターでオリジナルグッズに
2020年06月25日 デジタルプリンティング
コロナ禍の中、疫病を退散させると言われる妖怪「アマビエ」が話題です。ツイッターなどでイラストを見かけた方も多いかもしれません。アマビエの故郷とされる熊本に、UVプリンターを使ってアマビエのキーホルダーを作るサービスをいち早く立ち上げ注目を集めたお客様がいます。
アマビエとは?
江戸時代に肥後国(現在の熊本県)の海に現れ、「病が流行したら私の姿を写して人々に見せよ」と告げたと言い伝えられる妖怪です。新型コロナウイルスの感染が拡大した3月頃からツイッターなどで広く知られるようになり、疫病退散の願いを込めてアマビエの絵を描いて投稿する「アマビエチャレンジ」が人気を集めました。
熊本のデザイン事務所「ネストグラフィックス」にリモートでインタビューしました
アマビエキーホルダーを製作した熊本のデザイン事務所「ネストグラフィックス」代表の河北信彦さん(下写真)にリモートでお話を伺いました。
Roland DG:まずは、ネストグラフィックスのお仕事について教えてください。
河北さん:地元のデザイン事務所や出版業などを経て25年前に独立し、ネストグラフィックスを立ち上げました。私とスタッフ2名で運営しています。 地域の飲食店などの広告・ロゴデザインや、漫画・アニメファンやクリエイター向けにアクリル製のオリジナルグッズの加工サービスを行っています。UVプリンターでお客様のイラストをプリントしたアクリルキーホルダーやアクリルスタンドが主力商品です。
クオリティの高いグッズがクリエイターに人気。こちらは同社キャラクターをプリントしたアクリルスタンド
熊本地震を転機にオリジナルグッズの仕事にシフト
オリジナルグッズを作り始めたきっかけは?
ものづくり好きが高じて、5年ほど前から趣味のちょっとした試作にレーザーカッターを使っていました。他の活用法を探していた時、福岡のローランド ディー.ジー.のセミナーで、UVプリンターと組み合わせれば最終製品も作れると知って興味を持ちました。比較検討し、色が一番きれいだったローランド ディー.ジー.のプリンターの導入を決めました。
その後、熊本地震で地元のデザインの仕事が一気になくなってしまいました。ちょうど今のコロナショックと同じような状況です。心配し、ツイッターで応援してくれた全国のお客様からアクリル加工の仕事が多く入るようになり、今ではそちらがメインになりました。UVプリンターはデザインの仕事でもすぐに実物サンプルを作って提案でき、重宝しています。
グッズはどのように作っていますか?
お客様から入稿されたイラストをキーホルダーなどに加工します。次回の入稿〆切をツイッターで告知し、応募分をまとめて加工して約10日で納品しています。
漫画やイラストが好きなスタッフの「こんなサービスが欲しい」という意見は積極的に取り入れていきます。独自のノウハウで何度も重ねてプリントしてクオリティを上げたり、A4サイズに好きなだけデータを詰めて加工するサービスで大手他社との差別化を図っています。
アマビエのキーホルダーを作るサービスを最速で立ち上げ話題に
ツイッター発のアマビエグッズは全国ニュースでも取り上げられました。誕生のきっかけは?
不安な日々が続いた3月の初旬、たくさんの人がアマビエのイラストをツイッターに投稿しているのを目にしました。その後、アマビエが地元熊本の妖怪だと偶然知り、みなさんが願いをこめて描いたアマビエをうちでキーホルダーにして少しでも元気づけられないかとアイデアが浮かびました。
さっそく翌朝、イラストが得意なスタッフに30分でアマビエを描いてもらい、すぐにUVプリンターでサンプルを作りました。2時間後にはツイッターで「あなたのアマビエを500円でキーホルダーにしませんか」と発信したところ大反響。どこよりも早かったからかすぐに地元や全国のニュースで取り上げられ、3日で300件を超える注文がありました。
スタッフ作のアマビエをUVプリンター「LEF2-200」でキーホルダーにプリント
お客様の反応はいかがでしたか。
たくさんのお客様が自分のアマビエキーホルダーの写真や感謝のメッセージをツイッターで発信してくださいました。
当初はお客様のイラストで作る想定でしたが、サンプルのアマビエキーホルダーが欲しいとの要望も多く販売することに。「コロナで卒業式がなくなってしまった卒業生にお守り代わりに贈ります」と喜んでくれたお客様もいらっしゃいました。
遠方のお客様からお礼の電話も(イラストはネストグラフィックス公式ツイッターより)
また、キーホルダーはコロナショックで客足が減ってしまった地元の飲食店などへの支援として原価で提供し、販売した収益をお店の売上にしてもらっています。
地元の焼酎バーでも販売
書店でも販売。スタッフの制服にもアマビエが!
お客様と一緒に楽しめるような企画を作りたい
オリジナルグッズのお仕事でうれしかったことは何ですか?
「きれいに作ってくれてありがとう」とお礼のメッセージをいただくことですね。グッズのクオリティを上げることはもちろん、ファン作りも大切にしています。お客様との距離をもっと縮めたいと、公式ツイッターで次回のグッズ募集やプロのデータ作成のコツ、製作風景や時にはスタッフの絵日記なども日々発信しています。
これからチャレンジしたいことはありますか。
最近、好きなことを仕事にできればと、大ファンの漫画家や怪獣キャラクターのプロダクションのグッズも手がけ始めました。また、ネットで作品を発表するクリエイターとタッグを組み、グッズ製作にも取り組んでいます。
コロナの影響で、ターゲットの漫画・アニメ業界でもコミックマーケット(世界最大の同人誌即売会)などのイベントが3月頃から次々と中止になりました。
そこで、ただイベントを待つのではなく、自社企画のグッズを増やしました。ネットトレンドに詳しいスタッフが発案したさまざまな企画から、これはというものをスピーディーに出しています。UVプリンターがあればすぐにアイデアを実現でき助かります。
新企画は愛猫のおたま(!)の写真で作るキーホルダー。ユニークな発想が話題に
ネストグラフィックスの社名の「ネスト」は「鳥の巣」を意味します。鳥の巣のようにお客様と私たちスタッフが集い、つながり、一緒に楽しめるような取り組みを続けていきたいと思います。
ありがとうございました。
「お客様に喜んでいただきたい」という想いが伝わってくるインタビューでした。これからどんなグッズが生まれるのかとても楽しみです!