企業ニュース
2014年12月16日
ローランド ディー.ジー.株式会社
ローランド ディー.ジー.が浜松医科大学と共同推進する医療器具の保全・管理にかかわる作業支援システム構築プロジェクトが、経済産業省のモデル構築・実証事業に選定
産学連携プロジェクトで、当社の医療器具用マーキング技術とセル生産システムを活用した医療器具管理の新たなソリューションモデルを構築
業務用インクジェットプリンターや3次元ものづくりツールを製造・販売するローランド ディー.ジー.株式会社(取締役会長兼社長:冨岡昌弘、本社:静岡県浜松市)は、国立大学法人浜松医科大学(学長:中村達、本部:静岡県浜松市)と共同で推進する、医療器具の保全・管理にかかわる作業支援システム構築プロジェクトが、経済産業省が実施する「平成26年度産学連携評価モデル・拠点モデル実証事業(モデル構築・モデル実証事業)*1」に選定され、補助金が交付される運びとなりましたのでお知らせします。
経済産業省のモデル構築・実証事業は、大学の現場で発生した課題を産学連携で解決する事業を対象にしています。この度選定されたプロジェクトは、医療分野での事業拡大を目的に2013年に新設した当社メディカル事業部が、浜松医科大学と共同で医療器具の保全・管理に関わる作業支援システムを構築するものです。当社は、浜松医科大学医学部附属病院の中央診療施設材料部内での、内視鏡を中心とした医療器具の分解・洗浄・組立・滅菌などの作業品質および効率の向上という課題に対し、当社の医療器具用マーキング装置MPX-90M*2と当社の生産現場で導入されているデジタル屋台*3の作業支援システムに関する技術、ノウハウを応用することで課題を解決するとともに、他の医療機関が抱える同様の課題に対し汎用性の高いソリューションモデルを構築・提供することを目指します。課題解決を実証するに際しては、医学系大学産学連携ネットワーク協議会、はままつ次世代光・健康医療産業創出拠点、浜松商工会議所などから成るコンソーシアムの評価、支援を受けます。
当社は2014年度中に、MPX-90Mを活用して、浜松医科大学医学部附属病院の中央診療施設材料部が管理する手術用医療器具に2次元シンボルをマーキングし、医療器具のトレーサビリティー(追跡可能性)を確保するとともに、紙ベースのマニュアルを元に行われている内視鏡などの洗浄・組立作業をデジタルマニュアルに落とし込むなどして、作業支援システムを完成させる計画です。2015年度以降は、実用化・事業化に必要なノウハウを蓄積しながら、他院でも活用できるシステムの構築を目指し、汎用化を推進してまいります。また、システムの販売方法や販売チャネルを整備し、2018年度からは、医療機関に包括的なソリューションシステムを販売する事業を展開する予定です。なお、本プロジェクトで得られた成果は学会や専門誌などを通じて随時発表する予定です。
今回のプロジェクトのモデル構築事業主体である浜松医科大学の産学官共同研究センター長、山本清二教授は、同大学医学部附属病院の中央診療施設材料部や、一般的な日本の医療機関における医療器具管理の現状について次のように述べています。
「現在、医療器具の一連の保全作業は紙ベースのマニュアルで管理されており、個々の作業者の経験やノウハウに頼る部分が多く、作業品質のバラツキや作業手順の間違いなどの人的ミスの発生が懸念されています。作業者の負担を減らし、高品質な作業水準を確保できるよう、従来の作業方法を改善する必要があると強く感じています。また、多くの医療機関では、医療器具の管理が不十分で、器具の保有数や使用履歴等を把握できていないのが現状です。不十分な管理体制による器具の紛失・廃棄や、必要以上に多くの器具を購入してしまうケースもみられます。ローランド ディー.ジー.と進めるプロジェクトで、器具のトレーサビリティーを確保し、保全・管理のデジタル化を進めることで、医療作業の確実性を高めたいと考えています。また、併せて病院経営のさらなる効率化が図れるよう取り組んでまいります」。
一方、当社の事業開発本部メディカル事業部長の田部耕平は、プロジェクトに対する抱負を以下のように述べています。
「当社は創業以来、『デジタル技術の活用で、より豊かな社会を実現する』ことを使命とし、ヒトの手の動きを代替するXYZ(縦・横・高さ)軸の制御技術をベースに、様々な業界にデジタル化の価値を提供してまいりました。2013年10月に新設されたメディカル事業部は、これまでに当社が培った技術やノウハウを人々の生命や健康を預かる医療業界に適用していくという重要な任務を担っていますが、今回のプロジェクトを通じて医療現場の課題解決に貢献できる機会を頂けたことを光栄に思います。医療器具のトレーサビリティーと作業品質を確保し、患者の安全を担保することは、医療業界における最重要課題の一つとして、今後さらなる注目を集めることになると予想しています。浜松医科大学とのプロジェクトを成功させることはもちろん、汎用性の高いシステムを開発し、世界中の医療現場にデジタル技術によるソリューションの価値を提案していきたいと考えています」。
医療器具の保全・管理に関わる作業支援システム構築プロジェクトの背景
近年、医療の現場では、院内感染のリスクを回避し、患者の安全を確保すべく、従来の医療器具の保全・管理方法を見直す動きが広がっており、医療機関における器具の管理を徹底させようとする規制当局の動きも世界的に顕在化しています。米国では、全ての医療器具を対象に固有の識別子を表示するUDI (Unique Device Identification) 規制が2014年9月から段階的に施行されており、EU地域、アジア各国でも今後数年内に義務化される見込みです。当社は、これらの動きに対応して、2012年にMPX-90Mを発売し、日本をはじめ世界各国の医療機関、医療器具メーカーを中心に、器具に打刻した2次元シンボルを活用することで、各器具の保有数、所在、使用回数、使用履歴などを管理するソリューションを提案してまいりました。
また、当社は、医療現場にMPX-90Mを提案する過程で、手術後の医療器具の分解・洗浄・組立・滅菌などの作業が、作業者の経験値に左右される属人的なものに留まっている事例を見、煩雑な作業を伴う多種多様な医療器具の保全に、当社が生産現場に導入している作業支援システムを応用することで、業務品質および効率を向上させることができるのではないかと考えました。
検討を進める中で、当社は、浜松商工会議所の医工連携研究会での活動を通じて、浜松医科大学が抱える医療器具の保全・管理に関する課題を知るに至り、2013年からこれを解決するための共同研究を進めてまいりました。この度、浜松医科大学と当社の取り組みが、経済産業省のモデル構築・モデル実証事業に選定されましたことは、本活動を大きく前進させるものと考えております。当社がデジタル屋台の作業支援システムを当社製品の生産以外の分野に適用することは初の試みであり、医療現場でトレーサビリティー管理システムとともにデジタルマニュアルを活用した作業支援システムの構築を目指すことも世界的に例を見ませんが、医療現場に包括的なソリューションを提供できるよう当社の技術とノウハウを有効活用し、真摯に取り組んでいきたいと考えています。
*1 経済産業省の産学連携評価モデル・拠点モデル実証事業について
産学連携評価モデル・拠点モデル実証事業は、モデル構築事業とモデル実証事業で構成されます。モデル構築事業は、大学機関が主体となり、学内で認識された特定の課題を、大学が所在する地域の産業、自治体、商工会議所などと連携しながら、いかにして解決に導くかを示したPDCA(Plan, Do, Check, Action:計画、実行、評価、改善)サイクルモデルを構築することを狙いとしています。一方、モデル実証事業は、構築されたPDCAサイクルモデルが、当該課題を解決するものであることを産学連携プロジェクトで実証し、汎用性のある事業として確立させることを目指します。実証過程においては、予め定めた評価指標に基づき、第三者機関(産学連携コンソーシアム)の検証、助言を受けることで、実証性や事業化の確度を高める一方、外部有識者とモデル構築・実証事業に関わる主要メンバーから構成される実証モデルワーキング会議が、大学の産学連携活動を促進するための制度改革に向けた検討と提言を行います。最終的には、地域の産学連携活動を活性化し、連続的なイノベーションの創出により地域経済ひいては日本経済の発展を促すことを目的としています。
*2 MPX-90Mについて
医療器具へのマーキングに特化したドットピン方式の小型マーキング装置です。医療器具の一点一点にシリアル番号や2次元シンボルを打刻することで、トレーサビリティー(追跡可能性)の確保を可能にします。2次元シンボルの一種であるGS1データマトリックス**を1mm角で表現できる精度を備え、ドットピンで一定の深さに打刻することで、消えにくい印字が可能なうえ、印字面が錆びにくいという利点があります。医療器具を固定するバイスや印字の位置合わせ用にレーザーポインターを装備しており、取り扱いに難しい知識を必要とせず手軽にマーキングを施すことができます。
** GS1データマトリックスとは、バーコード、2次元シンボル、電子データ交換の世界標準化機関であるGS1(ジーエスワン、本部:ベルギー)が、世界各国の規制当局、機器メーカー、医療機関などと連携し、鋼製器具に表示する2次元シンボルとして定めた規格です。商品コード、使用期限、ロット番号、シリアル番号などの情報を26バイト(半角英数で26文字)まで保持することができ、専用のリーダーで読み取ることで器具の個別認識が可能です。
*3 デジタル屋台について
当社が独自に開発したデジタル方式のセル(一人一台)生産システムで、当社工場での生産に採用されています。作業者は、パソコンのディスプレイに表示されたデジタルマニュアルを確認しながら、工程ごとに必要な部品を自動供給する回転ラックから部品を取り出し、指示された電気ドライバーを選択して製品を組み立てていきます。間違った部品やドライバーを使用することがないよう工夫されているだけでなく、各工程で品質検査を実施することで、工程内で品質を作り込んでいます。デジタル技術を活用することで人間の記憶力や注意力をサポートし、高品質と高生産性を同時に達成していることが特長です。各屋台での作業ログデータはサーバ上に保存され、現場管理者が作業進捗を把握したり、データ解析を通じて改善活動につなげたりすることができるようになっており、個別の屋台の管理だけでなく、工場全体の生産を最適にコントロールできる点も大きな特長です。
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ローランド ディー.ジー.株式会社
グローバルマーケティング部 マーケティングコミュニケーション課 担当:沖野
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