企業ニュース
2014年08月22日
ローランド ディー.ジー.株式会社
「第10回 世界ファブラボ代表者会議(FAB10)」に協賛
業務用インクジェットプリンターや3次元切削加工機を製造・販売するローランド ディー.ジー.株式会社(取締役会長兼社長:冨岡昌弘、本社:静岡県浜松市)は、7月2日から8日までの7日間、スペイン・バルセロナ市で開催された「第10回 世界ファブラボ代表者会議(以下FAB10:ファブテン)」に協賛しましたのでお知らせします。
「ファブラボ(Fab Lab)」は、デジタルものづくりの機器を揃えた市民工房です。現在、世界50ヶ国以上250ヶ所以上に拠点があり、個人の自由なアイデアに基づくものづくりを支援するとともに、世界各地のファブラボ間のネットワーク化により、ものづくりに関する知恵やノウハウを共有し、国境を越えて協働するグローバルなものづくりコミュニティを形成しています。世界ファブラボ代表者会議は、年に一度、世界中のファブラボ関係者が一堂に会する場です。特定の課題解決に協力して取り組むワークショップや実習、デジタルものづくりに関するシンポジウム、各ファブラボの成功事例や取り組んでいるプロジェクトの紹介など多様な活動が行われます。
10回目を迎えた今回は、「From Fab Labs to Fab Cities(ファブラボからファブシティへ)」というテーマの下、都市全体の生産性向上、生活環境の課題解決、新興国の生活水準の向上といった文脈で、個人のものづくりを超えて、デジタルものづくりの可能性を追求する場となりました。また、それらを推進するためのインフラストラクチャーとして、ファブラボが中心となって、大学、行政、企業、起業家、ひいては一般市民、小中学生を巻き込みながら、街全体をより良いものに変えていこうとする、オンライン、オフラインでの協働体制を拡充する動きも確認されました。
当社は会期中、開発を進めております3次元切削加工機の新製品と新開発の積層造形機をはじめ、Desktop Fabrication(デスクトップ・ファブリケーション:机上でのものづくり)を支援する製品を展示し、新たにファブラボを開設しようとするマネージャーや、デジタルものづくりツールの充実によりさらなる可能性を追求しようとする方々に、当社製品の採用を提案しました。また、当社主催のワークショップでは、参加者に気軽にデジタルものづくりを楽しんでいただけるよう、カッティングマシンを活用した肖像画の制作や、3次元切削加工機を使ったオリジナル・チョコレート作りなどの体験会を実施し、身近な活用方法を通じて当社製品の創造性を訴求しました。
一方で当社は、世界中から集まったファブラボ関係者との交流を深めることで、彼らの夢やアイデア、また、都市生活や新興国での生活を、いかにしてより豊かで環境に優しいものに変革していくかという具体的なプランに接し、Desktop Fabricationのさらなる可能性や社会性を追求する必要性を確認しました。これまで以上に幅広い分野での課題解決が求められるようになった今、Desktop Fabricationが今後どのように貢献できるかを見極め、製品・ソリューション開発に活かしてまいりたいと考えております。
FAB10で行われた主な活動をご紹介します。
記者会見
会議の開催に先立って、主催者ならびにメイン・スポンサーが記者会見に臨みました。冒頭、挨拶に立ったバルセロナ市長のXavier Trias氏は、「バルセロナは19世紀に産業革命を主導した都市のひとつですが、21世紀を迎えた今、インターネットとデジタルものづくりツールを結びつけることで、さらなる変革ができるのではないかと考えています。ファブラボと行政、企業、市民が協力することで、市民がより良い生活を送ることができる街を実現し、新たな成長に向けたモデルとしてバルセロナから発信したいと考えています。」と述べ、FAB10に対する期待を表しました。
また、ファブラボ・バルセロナのディレクターで、FAB10の主催者でもあるTomas Diez氏は、「私は、デジタルものづくりが、都市のあり方や人々の都市への関わり方を変える可能性をもつものであると信じています。ファブラボの活動を通じて、デジタルものづくりの可能性をより多くの市民に伝えるとともに、都市の生産性向上、地産地消・自給自足が可能な社会の実現に向けて、主導的役割を発揮していきたいと思います。」と思いを語りました。
一方、ファブラボの提唱者で、マサチューセッツ工科大学教授のNeil Gershenfeld氏は、「バルセロナでは行政の後押しを受け、市内各処にファブラボが続々と設置されています。皆さんは、市が整備するインフラストラクチャーとして、電気や水道などをイメージされるかもしれませんが、バルセロナは全く新しい考えに基づいた次代のインフラストラクチャーを整備しています。それは、言うなれば、発明を推進する場を整備していると言ってもいいしょう。ファブラボの素晴らしいところは、グローバルネットワークでつながっていること、誰もが自由に集まり、自由にものづくりツールを使えるということにあります。教育、ビジネス、遊びなど、様々な分野でイノベーションを起こす可能性を秘めています。近い将来バルセロナは、グローバルの知識を結集し、ローカルで自給自足を成し遂げる街として世界をリードするようになるでしょう。」とバルセロナとファブラボ・バルセロナの取り組みを称賛しました。
当社を代表して挨拶に立った、当社執行役員で当社スペイン子会社Roland DG EMEA, S.L.の社長Eli Keersmaekersは、「私たちローランド ディー.ジー.が開発する製品は、誰もが、思い描いた夢やアイデアを気軽にカタチにできるようにとの理念に基づいて作られています。Desktop Fabricationの可能性をより多くの人々にひろめることを願う私たちにとって、私たちの製品が、ファブラボの皆様のオリジナリティあふれるものづくりや、未来を切り拓くための発明に活かされていることを誇りに思います。今後もさらなる可能性を追求するために、ファブラボの関係者の皆様と協働で製品開発を進めていきたい。」と述べました。
ファブラボ・ハウス
FAB10会場前の歩道では、FAB10のテーマとファブラボ・バルセロナを象徴する取り組みとして、ファブラボ・ハウスが建設されました。Tomas Diez氏を中心とするファブラボ・バルセロナは、建築に強みを持つファブラボです。2010年には、デジタル工作機器を活用して作った実験的太陽光発電住宅「Solar Fab House(ソーラー・ファブ・ハウス)」を発表しています。また2013年には、気温や湿度、騒音の大きさ、太陽光の強さ、空気の状態などを含む環境情報を市民一人ひとりが測定し、インターネット上のサーバにアップロードすることができるセンサー、「Smart Citizen Kit(スマート・シチズン・キット)」を開発し、バルセロナ市と市民を巻き込んで、都市マネジメントに有益なネットワーク・インフラストラクチャーを構築しています。
今回、ファブラボ・バルセロナが取り組んだのは、ファブラボのグローバルな広がりを表現しつつも、その一体化を象徴するランドマーク的パビリオン、「Fab Lab House(ファブラボ・ハウス)」 。ファブラボ・バルセロナで作った約20からなるモジュールを組み上げて、会期中に完成させました。パビリオンの屋根は、展開すると世界地図になり、ファブラボがある都市には印がつけられています。Fab Lab Houseの設計・施工をディレクションしたDaniel Ibanez氏は、当社のインタビューに答え、「すべての建築資材は天然のバルセロナのものを使っています。」と地産地消の考えに基づいていることを明かします。また、「このFab Lab Houseの最大の目的は、ファブラボに設置されているデジタルツールだけで、これだけのことができるという可能性を示すことです。将来的には、誰もが自分たちでデザインし、自分たちで作るという自給自足の文化を街づくりに適用していきたいと思います。」と語っています。
グローバル・ファブ・アワード
FAB10では、Global Fab Awards(グローバル・ファブ・アワード)の表彰式が開催されました。Global Fab Awardsは、ファブラボのグローバルネットワーク構築を支援するFab Foundation(ファブ・ファウンデーション)と世界銀行、米国国際開発庁などが企画したもので、今回が初開催となります。賞の目的は、発展途上国の生活水準向上に貢献する技術的創造を表彰するとともに、そうした可能性を行政、企業、投資家などと結びつけることで、より現実的な方法論への落とし込みとグローバル展開を推進することです。
栄えある第一回の最優秀賞に輝いたのは、トーゴ共和国のファブラボ「WOELAB」が開発した3Dプリンターでした。この3Dプリンター、実は、廃棄処分されたパソコンや家電の部品を組み合わせて作られたもの。例えば、筐体はパソコンの本体を、ヘッド部分を駆動させるモーターは、プリンターに使われていたものを再利用しています。
建築家・文化人類学者であり、WOELABの創設者でもあるSénamé Koffi Agbodjinou氏は、当社のインタビューに対して、「この3Dプリンターは、自分たちのものづくりに必要なパーツを作るほか、壊れたミシンのパーツを出力するなど、地域住民の困りごとを解決するのにも活用しています。私たちはコンピュータや家電はもちろんのこと、プラスチックなどの素材も全て欧米から輸入しています。再利用できるものはうまく活用し、自分たちに必要なものは何かを考え、できるだけ地のものを使って自分たちで作る文化を広げていきたいと考えています。」と述べ、「近いうちに、トーゴの首都ロメに複数のファブラボを設置し、スマートシティの実現に向けた動きを推進していきたい。」と今後の抱負を語りました。WOELABには、当社の3次元切削加工機の新製品と賞金3,000ユーロが贈呈されました。
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廃材を利用して作られた3Dプリンター
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インタビューに応えるSénamé Koffi Agbodjinou氏
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当社の3次元切削加工機の新製品を受け取るWOELABのメンバー
ファブ・キッズ
FAB10の期間中、Fab Kids(ファブ・キッズ)と銘打って、地元バルセロナの小中学生を対象としたデジタルものづくりのワークショップが開催されました。イベントの目的は、アイデアをいかにして形にするかを伝えること。子供たちは、ファブラボ・バルセロナのメンバーのサポートを受けながら、3D CADと3Dプリンターを使ってイヤホンホルダーを作ったり、レーザーカッターを使って段ボールから動物の模型を切り出したりと、デジタルものづくりの可能性を体感しました。子供たちの間でポピュラーなゲーム「三目並べ(Tic Tac Toe)」で使う○と×のパーツを作るワークショップでは、その型作りに当社の3次元切削加工機も活用されました。いずれのデジタルツールも子供たちには新鮮で、興味深げに加工過程を見入っていました。
Neil Gershenfeld氏は、著書「ものづくり革命」の中で、「パーソナル・ファブリケーションの未来を読み取りたければ、ファブラボに置かれたパーソナル・ファブリケーション・ツールにアクセスしている子供たちや若者の表情を見ればよい」と述べましたが、「ものづくり」は、発想を表現する手段であり、人々の知性や感性を解き放ち、具体的な力に変えていくということが、子供たちの表情を見るとよく分かります。Desktop Fabricationが、既成概念にとらわれない子供たちの斬新な発想を形にし、子供たちに力を与え、人々の生活や街、社会のあり方を変えていく原動力になろうとしています。
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3D CADでの設計を学ぶ子供たち
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段ボール模型の組み立てを学ぶ
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三目並べのパーツを作るワークショップWOELABのメンバー
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ローランド ディー.ジー.株式会社
グローバルマーケティング部 マーケティングコミュニケーション課 担当:沖野
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